searching見てない人へ、ポスターは見るな(ネタバレ注意)

まず、はじめに私はあまり映画は見ない
映像作品に触れることこそ多いが、特に映画館に行くことはめっきり減った
なのであまり説得力は無いかもしれないが、このsearchingという映画は傑作である

傑作…なのだが、一つ大きな問題がある
ポスターがクソなのである

なので
ここまででこの映画を見ていない人は友達を生贄にして映画のチケットを取らせ、前情報無しで観に行くことをオススメする
唯一この作品についていうなら、PCやスマホ等の画面の中しか映さないというコンセプト作品、という事だけは知っていて良いだろう
99%、観て損することは無い、と思う
私は友人に道連れに入ったのでこのポスターを見なくてよかった…と心から思ったクチなので、声を大にして警告したい(大袈裟)

さてここから先はネタバレ。なので、観てから読んで

























さて、タイトルの話である。

ポスターの何が悪いのか、と言うと煽り文句である
ぶっちゃけこの煽り文句はネタバレにしかなっていない
その問題(と私だけが思ってる)のキャッチフレーズは
「娘を検索する 初めて知る闇
娘が行方不明。唯一の手掛かりは24億8千万人のSNSの中にある」である(ネタバレ注意!)

まず、このキャッチフレーズを語るには映画の中身も語らなければならないので、構成を書く


1、PCの画面が出てくる。PCの持ち主の家族の情報。父と母と一人娘。母が他界してしまう。
2、数年後、その娘が行方不明になり、その足跡を追う。めちゃくちゃな量の情報が行き交う。犯人がわれる
3、エピローグ
まぁめちゃくちゃざっくり言うとこの3つのパートに分かれる。
ちなみに、この足跡を追うときに何度か状況が何転もしていく、ということになる。導入と捜査と少ないが解決後のエピローグということになる。

このキャッチフレーズの良くないところを真っ先に一つ上げるとするなら、
SNS」という単語は絶対に出しては行けないだろ、ということにつきる。
まず、確かにこの映画はサスペンス系のきらいはあるものの決して使っているものはSNSだけでは無い、という点にある。
電話もインターネットも脚も使って、やっている事は「娘の居場所を検索」なんてものではなく、「捜査そのもの」でしかない。それが、この映画に没入感をもたらす一つの要素になっている。
その中で「SNS」なんて単語を出してしまうと「手口が限定される」という致命的なヒントになってしまう。そしてある程度思い当たってしまう。「あぁ、こういう事件あったよな」という心理を作ってしまうことになる。
その結果、どういう映画の見方になるかというと想像に難くない。「SNSの犯罪によく使われる手口がヒントになってるんだろ。知ってるよ」という上から目線で観てしまうことに(特に深読み好きの俺なんかは)なっていただろう。

没入感が肝の作品に対して俯瞰から見せるようなワードを軽々しく使うべきじゃない。この作品は「画面上しか映さない」作品である結果、この作品はパソコンを使っている使用者と視聴者をリンクさせ、その結果没入感をもたらす仕組みになっている。
それに対してこのキャッチフレーズは、SNSを検索するところだけに焦点を当ててしまい、物語がそこでしか進まないような視点に持っていってしまう。
しかもあろう事かそのSNS検索がこの作品のトリックの肝なので、余計作品を薄くさせてしまうだろう。

というか、主人公が娘が行方不明になった事を受け入れるまでに時間がかかっていたり、それが警察案件なのか家出なのか判断するまでかなりスパンがある。それは娘の動機という部分をかなり強く想起させるので、重要なタイムラグなのだが、そう考えると「行方不明」というワードも結構ギリギリに感じる。「居なくなった」とかの方が良いだろう。

そもそもこういったトリック仕掛けのもののキャッチフレーズはとても難しい。軽々しく印象付けてはいけないという縛りがある。もしアクション映画なら中身にガッツリ触れても問題なく楽しめるのだが。「あなたは騙される」系のクソ陳腐な文句はもう出尽くしたので、中身にインパクトが欲しいのも良くわかる。

私なら「画面」とか「ネット」「PC」等のこの作品の形態についてピックアップするキャッチフレーズで書くべきと思う。だから「娘を検索する」って部分は良いとは思うんだが。
絶対「インパクトをだしたい!24億8千万人って数字で気を引こ!」って考えたろ。だがそれはアクション映画の広告だ。そもそも、そのうち24億7千人強は無関係だろうが。
日本の広告はこんな短絡的にデザインしてるのかなと気分が滅入るようなそんなポスターである。




少しだけ作品の方のレビューをすると、
この作品の最大の良い点は、たどり着いたヒントに、主人公が視聴者と同じ瞬間でキチンと気づいてくれるという点である。結果として、「おい、ここ伏線どう回収すんだよ」といった感じに視点が浮つかず、主人公と同じ気持ちを味わえること。
そういう意味では頭の回転が速い人ほど楽しめる映画じゃないかな。まぁ、そういう「着いてこれない誰かを置いていく作品」というものは傑作が多いと、俺は感じるが果たして。